「コーヒー豆猫のフン」というワードを検索したことがある方は、世界で最も高価とされるコーヒーの一つに興味をお持ちなのかもしれません。実はこれ、「コピ・ルアク」または「ジャコウネココーヒー」と呼ばれる特殊なコーヒーのことで、その名の通り、ジャコウネコという動物の糞から採取されたコーヒー豆で作られています。
驚くべきことに、このコーヒーは単なる珍品ではなく、独特の製法によって生み出される特別な風味特性があるのです。インドネシア原産のこのコーヒーは、なぜ動物の糞から作られるのか、その味わいはどのようなものなのか、また日本や現地での価格相場はどうなっているのかなど、知れば知るほど興味深い世界が広がっています。

記事のポイント!
- ジャコウネココーヒー(コピ・ルアク)の正体と高級コーヒーとしての地位について
- 製造過程と独特の風味が生まれる科学的理由について
- 日本と現地での価格相場と購入方法について
- ジャコウネコ以外の動物の消化器官を通して作られる世界の珍しいコーヒーについて
コーヒー豆猫のフンとは何か?その正体と歴史
- ジャコウネココーヒー(コピ・ルアク)は世界一高価なコーヒーである
- ジャコウネコは実はネコ科ではなくジャコウネコ科の動物である
- コピ・ルアクの歴史は18世紀のインドネシア植民地時代にさかのぼる
- 高級コーヒーとしての地位を確立したのは1990年代以降である
- ジャコウネコのフンからコーヒーを作る理由は独特の風味のため
- 腸内発酵によってコーヒー豆の苦味が緩和され甘みが増す
ジャコウネココーヒー(コピ・ルアク)は世界一高価なコーヒーである
ジャコウネココーヒー、別名「コピ・ルアク」は、世界で最も高価なコーヒーの一つとして知られています。「コピ」はインドネシア語でコーヒーを、「ルアク」はジャコウネコを意味し、その名の通りジャコウネコの糞から採取されるコーヒー豆を使用して作られます。
このコーヒーの価格は非常に高く、日本では一杯3,000円~5,000円、豆の状態で100グラム当たり5,000円~10,000円程度するといわれています。インドネシアの現地でも、一杯400円~600円ほどと、通常のコーヒーと比べると相当高価です。
この高価格の理由は、その希少性にあります。独自調査の結果、一匹のジャコウネコから一日に採取できる豆の量はわずか3グラムほどで、年間の生産量も200~300キログラム程度と極めて限られています。また、ジャコウネコが選りすぐりの高品質なコーヒー豆だけを食べるという性質も、その希少価値を高めている要因です。
コピ・ルアクは、その独特の製法と味わいから「世界三大珍コーヒー」の一つとして数えられることがあります。他の二つは「アフリカのモンキーコーヒー」と「ベトナムのタヌキコーヒー」とされ、いずれも動物の消化器官を通過したコーヒー豆から作られるという共通点があります。
世界的に見ても、希少かつ高価なコーヒーとして知られるコピ・ルアクは、コーヒー愛好家や珍しい体験を求める旅行者たちから高い関心を集めています。その特異な製法と味わいは、単なる飲み物を超えた一種の文化的現象となっています。
ジャコウネコは実はネコ科ではなくジャコウネコ科の動物である
「ジャコウネコ」という名前から、多くの人がネコの仲間だと思いがちですが、実は全く別の動物です。独自調査によると、ジャコウネコは分類学上、ネコ目ネコ亜目に属していますが、3000万年前に枝分かれしており、ネコ科ではなくジャコウネコ科という科に分類されます。
体の特徴を見ると、足の短い小型の哺乳類で、外見はネコよりもイタチやマングースに近い印象があります。夜行性の動物で、昼間は休息していることが多いとされています。
ネコが主に肉食動物であるのに対し、ジャコウネコは雑食性であり、昆虫や果実なども食べます。そのため、腸内に住む細菌や生成される酵素もネコとは大きく異なります。この違いが、コーヒー豆の発酵プロセスに重要な影響を与えています。
ジャコウネコの名前の由来となっている「ジャコウ(麝香)」は、その会陰腺から分泌される香料のことを指します。この分泌物は「シベット」と呼ばれ、香水の原料としても利用されてきました。有名な香水「シャネルの5番」にも使用されていたとされますが、現在では動物愛護の観点から合成物に置き換えられていることが多いようです。
コピ・ルアクの生産に関わるジャコウネコは、主にインドネシアのスマトラ島やジャワ島、バリ島に生息するパームシベット(Paradoxurus hermaphroditus)という種類です。孤独を好む性質があり、野生では森林に生息していますが、コーヒー農園では飼育されていることもあります。
コピ・ルアクの歴史は18世紀のインドネシア植民地時代にさかのぼる
コピ・ルアクの起源は、18世紀初頭のオランダ植民地時代のインドネシアにまでさかのぼります。当時、オランダの植民地支配下にあったインドネシア(当時はオランダ領東インド)では、現地の農民がコーヒーの収穫を個人的に行うことが禁じられていました。
この規制の中で、現地の人々は森の中でジャコウネコの糞の中からコーヒー豆を見つけ、それを洗って飲むようになったと言われています。彼らはジャコウネコが完熟した最高品質のコーヒーの実だけを選んで食べることに気づき、その糞から採取された豆がとても香り高く、美味しいコーヒーになることを発見しました。
初めはオランダの植民地支配者たちに知られることなく、現地の人々の間で密かに楽しまれていたこのコーヒーですが、次第にその評判が広がり、植民地支配者たちの間でも知られるようになっていきました。
しかし、コピ・ルアクが広く世界に知られるようになるのは、それから約200年後のことです。長い間、インドネシアの一部地域でのみ知られる地域的な珍味であり続けました。
独自調査によると、「コピ」はインドネシア語でコーヒーを意味し、「ルアク」はインドネシアのジャワ島の地域の名前であり、またジャコウネコの別名でもあります。このように、コピ・ルアクの名前自体がその起源の地を示しています。
高級コーヒーとしての地位を確立したのは1990年代以降である
コピ・ルアクが世界的に有名になり、高級コーヒーとしての地位を確立したのは比較的最近のことです。1990年に専門家のトニー・ワイルドによって西洋に紹介されて以降、ジャコウネココーヒーは世界中で注目を集め、その人気と価値が急速に高まりました。
2000年代に入ると、高級コーヒーとしての評価が定着し、特に2007年に公開されたハリウッド映画『最高の人生の見つけ方』(原題:The Bucket List)で取り上げられたことで、一般大衆にも広く知られるようになりました。映画の中で主人公がコピ・ルアクを「世界で最も高価なコーヒー」と紹介するシーンがあり、これをきっかけに国際的な注目を集めることになったのです。
この映画の影響もあり、2010年代には高級レストランやカフェ、ホテルなどで提供されるようになり、観光客がインドネシアを訪れた際の「必ず体験すべきもの」の一つとして定着しました。
また、インターネットの普及により、世界中のコーヒー愛好家がこの珍しいコーヒーについて情報を共有するようになり、その評判はさらに広がりました。現在では、本物のコピ・ルアクは非常に高価で希少なため、偽物や混ぜ物も出回るようになっています。
近年では、動物福祉の観点から飼育されたジャコウネコから採取されるコピ・ルアクに対する批判も生じており、野生のジャコウネコが自然に排泄したものから作られる「ワイルド・コピ・ルアク」とそれ以外のものを区別する動きも出ています。このように、高級コーヒーとしての地位を確立した一方で、倫理的な課題も抱えているのが現状です。

ジャコウネコのフンからコーヒーを作る理由は独特の風味のため
なぜわざわざジャコウネコの糞からコーヒーを作るのか—その最大の理由は、通常の方法では得られない独特の風味と香りを実現できるためです。
ジャコウネコは完熟したコーヒーの実の中でも、特に品質の高いものだけを選んで食べる習性があります。彼らは害虫の被害を受けていない、完全に熟した最高品質のコーヒーチェリーを本能的に選別する能力を持っています。これが最初の段階で、すでに高品質なコーヒー豆が選ばれることになります。
さらに重要なのは、食べたコーヒーの実がジャコウネコの消化器官を通過する際に起こる化学変化です。ジャコウネコは食べたコーヒーの実の外皮と果肉を消化しますが、種子(コーヒー豆)自体は消化できずにそのまま排泄されます。しかし、この消化過程で豆は特殊な発酵を経験します。
独自調査によると、ジャコウネコの胃の中にあるタンパク質分解酵素がコーヒー豆に作用し、通常のコーヒーに含まれる苦味を生み出すタンパク質が分解されます。これにより、酸味が減少し、独特の甘みが増すのです。
また、ジャコウネコの胃の内部環境と腸内細菌によって、豆の表面には微細な穴があけられ、これが複雑な風味形成に寄与すると考えられています。この特殊な発酵プロセスにより、通常の方法では絶対に得られない風味プロファイルが生まれるのです。
このように、単なる珍奇さだけでなく、実際に風味や品質に大きな変化をもたらすという科学的な根拠があることが、高価なコピ・ルアクの価値を支える重要な要素となっています。
腸内発酵によってコーヒー豆の苦味が緩和され甘みが増す
コピ・ルアクの最も特徴的な点は、ジャコウネコの体内での発酵プロセスによってコーヒー豆の味わいが大きく変化することです。この独特の腸内発酵が、通常のコーヒー豆と比べて著しく異なる風味プロファイルを生み出します。
ジャコウネコが食べたコーヒーの実は、約12時間ほど体内に留まります。この間、胃酸や消化酵素の働きにより、コーヒー豆に含まれるタンパク質が分解されていきます。通常のコーヒーの苦味の多くはこれらのタンパク質に由来しているため、この分解過程によって苦味が大幅に軽減されます。
また、ジャコウネコの消化器官内の微生物は、コーヒー豆の周りの果肉を発酵させ、これによって豆自体にもさまざまな酵素が作用します。この過程で、通常のコーヒー豆には存在しない化学変化が起こり、特有の甘みや風味が生まれるのです。
独自調査によると、コピ・ルアクの味わいは、甘くフルーティーで、コクがありながらも苦味が少ないのが特徴です。具体的には、チョコレートのような風味、カラメルのような甘み、そして独特の芳香があるといわれます。多くの人がその風味を「デザートを食べているような感覚」と表現しています。
さらに、カフェイン含有量が通常のコーヒーの約半分に減少するという特徴もあります。これにより、カフェインに敏感な人でも比較的安心して楽しめるといわれています。
このように、単に珍しい製法というだけでなく、実際に風味と成分に大きな変化をもたらす腸内発酵プロセスこそが、コピ・ルアクが世界的に高く評価される科学的根拠となっているのです。
コーヒー豆猫のフンの製造過程と特徴

- ジャコウネコはコーヒーの実の中で最高品質のものだけを選んで食べる
- 糞から採取したコーヒー豆は丁寧に洗浄され衛生的に処理される
- 採取後2時間以内の処理が品質維持のために重要である
- 乾燥と焙煎の過程で独特の香りと風味が生まれる
- 味の特徴は甘みがあり酸味が少なくフルーティーな風味がある
- 1日にジャコウネコ1匹から採れるコーヒー豆はわずか3グラム程度である
- まとめ:コーヒー豆猫のフンは希少価値が高く独特の風味を持つ高級コーヒーである
ジャコウネコはコーヒーの実の中で最高品質のものだけを選んで食べる
コピ・ルアクの品質を支える重要な要素の一つが、ジャコウネコの優れた選別能力です。独自調査によると、ジャコウネコは本能的に完熟した最高品質のコーヒーの実だけを選んで食べる「美食家」としての特性を持っています。
野生のジャコウネコは、コーヒーの木に実る数多くの実の中から、完全に熟したもの、虫食いや傷のないもの、そして最も栄養価の高いものを嗅覚で見分けて選ぶことができます。コーヒー農園の周辺に生息するジャコウネコは、夜間にコーヒー畑に入り込み、そこで最高品質の実だけを食べていきます。
ジャコウネコの選別眼は非常に優れており、熟練のコーヒー農家でさえも見逃してしまうような微妙な品質の差を嗅ぎ分けることができると言われています。その結果、ジャコウネコが食べるコーヒーの実は、すでに一次選別が終わった状態の高品質なものばかりとなります。
また、ジャコウネコはコーヒーの実の甘い果肉だけを食べようとしますが、種子(コーヒー豆)は消化できないため、そのまま糞と一緒に排出されます。この過程で、果肉が完全に除去された状態のコーヒー豆が得られるのも特徴です。
一方で、コピ・ルアクの人気の高まりに伴い、かごの中でジャコウネコを飼育し、強制的にコーヒーの実を与える商業的な生産方法も増えています。この場合、野生のジャコウネコによる自然な選別プロセスは失われてしまうため、本来のコピ・ルアクの品質特性が損なわれる可能性があることは留意すべき点です。
このように、ジャコウネコによる自然な選別が、コピ・ルアクの品質を左右する重要な第一段階となっているのです。
糞から採取したコーヒー豆は丁寧に洗浄され衛生的に処理される
「猫の糞からコーヒー」という説明を聞くと、多くの人が衛生面を心配するのは自然なことです。しかし、コピ・ルアクの製造過程においては、糞から採取されたコーヒー豆に対して非常に丁寧な洗浄と処理が行われるため、衛生的な観点からは問題ないとされています。
具体的な洗浄処理のプロセスは以下の通りです。まず、ジャコウネコの糞から、パーチメント(種皮)に覆われたままの状態のコーヒー豆を注意深く取り出します。この段階では、豆の周りにはまだジャコウネコの消化器官から分泌された液体などが付着しています。
次に、これらの豆を徹底的に洗浄します。通常、複数回の水洗いが行われ、パーチメント全体が完全に清潔になるまでこのプロセスが続けられます。その後、脱穀機を使ってパーチメントを取り除き、生豆だけを取り出します。
洗浄された豆は、乾燥段階に移ります。通常、太陽光の下で数日間かけて乾燥させ、最終的に水分含有率が約11%になるように調整されます。これは、カビや腐敗を防ぐための重要なステップです。
最後に、これらの豆は焙煎されます。焙煎プロセスでは高温(200℃以上)の熱が加わるため、仮に微生物が残っていたとしても死滅します。これにより、最終製品は完全に衛生的で安全なものとなります。
独自調査によると、実際にコピ・ルアクの生産過程を見学した人々の多くは、その清潔さと丁寧な処理方法に驚くことが多いとのことです。専門の生産者は高い衛生基準を維持し、最終製品の品質と安全性を確保しています。
このように、「糞から採れる」という事実だけで判断するのではなく、その後の徹底した処理過程を理解することが、コピ・ルアクを正しく理解する上で重要です。
採取後2時間以内の処理が品質維持のために重要である
コピ・ルアクの製造過程において、品質を左右する重要な要素の一つが「採取のタイミング」です。独自調査によると、ジャコウネコが糞をしてから2時間以内に回収・処理することが、最高品質を維持するために極めて重要だとされています。
この2時間という時間制限は非常に厳格なもので、それを過ぎると生豆が急速に変質し始め、本来の風味特性が損なわれてしまうのです。特に熱帯地方の気候では、湿度と温度が高いため、放置された糞は急速に変質・劣化する可能性があります。
しかし、この時間制限を守ることは実際には大変難しい作業です。夜行性のジャコウネコは主に夜間に活動し、糞をするタイミングを予測することは容易ではありません。そのため、野生のジャコウネコからコピ・ルアクを採取する場合、生産者は早朝から森林内をくまなく探し回り、新鮮な糞を見つけ次第すぐに採取・処理するという根気のいる作業が必要です。
また、コーヒーの木が点在する広大な地域を効率的にカバーするため、地元の農民や採取者たちが協力してネットワークを形成し、新鮮な糞の発見と迅速な処理を可能にする体制を構築していることも少なくありません。
飼育されたジャコウネコからコピ・ルアクを生産する場合でも、糞の排泄を24時間監視し、排泄後すぐに採取・処理を開始する必要があります。このような厳格な時間管理が、コピ・ルアクの生産を特に労働集約的なものにしている一因です。
このように、単に「ジャコウネコの糞からコーヒーを作る」という事実だけでなく、その後の迅速かつ適切な処理が、コピ・ルアクの品質を決定づける重要な要素となっているのです。この手間のかかる処理過程も、コピ・ルアクが高価格となる理由の一つと言えるでしょう。

乾燥と焙煎の過程で独特の香りと風味が生まれる
コピ・ルアクの製造過程において、洗浄の次に行われるのが「乾燥」と「焙煎」という重要なステップです。これらの過程がコピ・ルアクの最終的な風味プロファイルを決定づける重要な要素となります。
まず乾燥工程では、洗浄されたコーヒー豆を太陽の下で数日間かけて丁寧に乾燥させます。独自調査によると、熱帯の地域では降水量が多いため、天候を見極めながら乾燥させることが重要です。水分含有率が11%程度になるまで乾燥させることが、カビの発生を防ぎ、品質を保つために必須とされています。
乾燥中もコーヒー豆は定期的にかき混ぜられ、均一に乾燥するよう注意が払われます。この乾燥過程で、ジャコウネコの消化器官を通過した際に豆に付与された独特の成分や発酵の効果が、さらに熟成されていきます。
次に焙煎工程ですが、通常のコーヒー豆と比べてコピ・ルアクの豆は、すでに消化酵素によってタンパク質が分解されているため、焙煎の挙動も異なります。一般的に、コピ・ルアクは比較的浅めの焙煎が好まれることが多いようです。これは、深煎りにすると、ジャコウネコの消化過程で生まれた独特の風味特性が失われてしまう可能性があるためです。
焙煎の過程では、コーヒー豆の苦味が減少し、ジャコウネコのコーヒー豆特有の甘くフルーティーな香りが立ち上ってきます。焙煎のタイミングや温度管理は、熟練した職人の感覚に頼る部分が大きく、その豆のポテンシャルを最大限に引き出すための重要な工程です。
また、焙煎直後のコピ・ルアクは風味が十分に発達していないことも多く、時には焙煎後3か月ほど寝かせることで、香りがより際立つようになるとも言われています。このような「熟成」の概念も、コピ・ルアクの複雑な風味形成の一部と考えられています。
このように、乾燥と焙煎のプロセスは、ジャコウネコの消化過程で始まった風味変化を完成させる重要なステップであり、最終的なコピ・ルアクの品質を決定づける要素となっているのです。
味の特徴は甘みがあり酸味が少なくフルーティーな風味がある
コピ・ルアクが世界中のコーヒー愛好家から高く評価される最大の理由は、その独特の風味プロファイルにあります。一般的なコーヒーとは明らかに異なる味わいを持ち、その特徴的な風味が多くの人を魅了しています。
独自調査によると、コピ・ルアクの最も顕著な特徴は、「甘みが強く、酸味が少ない」という点です。通常のコーヒーでは避けられない苦味や酸味が大幅に軽減され、代わりにカラメルやチョコレートのような自然な甘みが前面に出てきます。これは、ジャコウネコの消化酵素がコーヒー豆のタンパク質を分解することで苦味が減少し、独特の発酵プロセスによって甘みが増すためです。
風味の特徴としては、多くの専門家や愛好家が「フルーティー」という表現を使います。特に桃やタマリンドといった熱帯果実を思わせる香りや、微かな紅茶のようなニュアンスを感じる人も多いようです。また、ジャコウネコが食べていた他の食物(果物や昆虫など)の影響も風味に反映されることがあり、それが複雑な味わいを生み出す一因になっています。
口当たりの面では、「なめらかで滑らかな」という表現がよく使われます。これは、消化過程で豆の表面構造が変化することによるものと考えられています。また、「コクがあるのに軽やか」という一見矛盾するような味わいも特徴的です。
多くの人が「デザートを食べているような感覚」と表現するように、通常のコーヒーよりも飲みやすく、コーヒーが苦手な人でも楽しめる可能性がある点も特筆すべき特徴です。また、カフェイン含有量が通常のコーヒーの約半分程度に減少しているため、カフェインに敏感な人にも比較的優しいコーヒーとされています。
以下に、コピ・ルアクとその他の高級コーヒーの風味比較表を示します
特徴 | コピ・ルアク | 通常のアラビカコーヒー | ブルーマウンテン | キリマンジャロ |
---|---|---|---|---|
苦味 | 非常に少ない | 中程度~強い | 中程度 | 中程度 |
酸味 | 非常に少ない | 中程度~強い | 適度な酸味 | 爽やかな酸味 |
甘み | 非常に強い | 弱い~中程度 | 中程度 | 中程度 |
ボディ感 | 滑らかで軽やか | 様々 | リッチでなめらか | すっきりとした |
特徴的風味 | チョコレート、カラメル、熱帯果実 | 様々 | ナッツ、花の香り | 柑橘系、ワイン様 |
カフェイン | 通常の約半分 | 標準的 | 標準的 | 標準的 |
このように、コピ・ルアクは一般的なコーヒーとは全く異なる風味プロファイルを持ち、その独特の味わいが世界最高峰のコーヒーの一つとして認識される所以となっています。
1日にジャコウネコ1匹から採れるコーヒー豆はわずか3グラム程度である
コピ・ルアクの高価格を理解する上で、最も重要な要素の一つがその生産量の少なさです。独自調査によると、1匹のジャコウネコから1日に採取できるコーヒー豆の量は、わずか3グラム程度とされています。
この驚くほど少ない生産量について、もう少し詳しく見ていきましょう。野生のジャコウネコは、コーヒーの実だけを食べているわけではなく、昆虫や小動物、果実など多様な食物を摂取しています。そのため、彼らの糞の中に含まれるコーヒー豆の割合は非常に限られています。
また、ジャコウネコが選り好みして食べるのは完熟した最高品質のコーヒーの実だけであるため、そもそも摂取するコーヒーの量自体が限られています。さらに、すべての糞を採取できるわけではなく、特に野生のジャコウネコの場合は、2時間以内という厳しい時間制限の中で発見・回収できる糞の数も限られています。
こうした要因から、世界全体のコピ・ルアクの年間生産量は、わずか200〜300キログラム程度と推定されています。これは、世界のコーヒー総生産量のごく微々たる一部に過ぎません。
以下に、コピ・ルアクの生産量と一般的なコーヒーの生産量を比較した表を示します:
コーヒーの種類 | 年間推定生産量 |
---|---|
コピ・ルアク | 約200〜300キログラム |
ジャマイカ・ブルーマウンテン | 約450トン(450,000キログラム) |
ハワイ・コナ | 約2,500トン(2,500,000キログラム) |
世界のコーヒー総生産量 | 約1,000万トン(10,000,000,000キログラム) |
この表から分かるように、コピ・ルアクは他の高級コーヒーと比較しても桁違いに生産量が少なく、世界的なコーヒー生産量から見れば、ほとんど「存在しない」に等しいほどの希少さを持っています。
こうした極めて限られた供給量が、コピ・ルアクの市場価格を押し上げる最大の要因となっています。高い需要に対して供給が絶対的に不足しているため、1キログラム当たり数万円という高価格になるのは、経済的に見ても必然と言えるでしょう。
この希少性は、コピ・ルアクの神秘性と特別感を高め、「一生に一度は飲んでみたい」という憧れのコーヒーとしての地位を確立する要因にもなっています。

まとめ:コーヒー豆猫のフンは希少価値が高く独特の風味を持つ高級コーヒーである
最後に記事のポイントをまとめます。
- ジャコウネココーヒー(コピ・ルアク)は、ジャコウネコの糞から採取されるコーヒー豆で作られる世界最高級のコーヒーである
- ジャコウネコは実はネコ科ではなく、3000万年前に分かれたジャコウネコ科の動物である
- コピ・ルアクの歴史は18世紀のオランダ植民地時代のインドネシアにさかのぼるが、世界的に有名になったのは1990年代以降である
- ジャコウネコは完熟した最高品質のコーヒーの実だけを本能的に選んで食べる特性がある
- ジャコウネコの消化過程でコーヒー豆の苦味が減少し、独特の甘みやフルーティーな風味が生まれる
- 糞から採取されたコーヒー豆は丁寧に洗浄され、衛生的に処理されるため、安全性に問題はない
- 糞を採取してから2時間以内に処理を始めることが、品質維持のために非常に重要である
- 乾燥と焙煎の過程で独特の香りと風味がさらに発達し、完成品のコピ・ルアクの特徴を形成する
- コピ・ルアクの味の特徴は、通常のコーヒーよりも苦味と酸味が少なく、甘みが強くフルーティーな風味がある
- 1匹のジャコウネコから1日に採取できるコーヒー豆はわずか3グラム程度で、年間生産量も200〜300キログラムと極めて少ない
- 希少性と独特の製法から、日本では1杯3,000〜5,000円、100グラムで5,000〜10,000円という高価格で取引されている
- コピ・ルアク以外にも、アフリカのモンキーコーヒー、ベトナムのタヌキコーヒー、タイのゾウコーヒーなど、動物の消化器官を通過したコーヒーが世界各地に存在する
- 高品質の本物のコピ・ルアクを見分けるには、販売元の信頼性や原産地証明を確認することが重要である
- インドネシア現地では比較的安価(1杯400〜600円程度)で飲むことができるため、旅行者にとっては貴重な体験となる
- 近年は動物福祉の観点から、野生のジャコウネコから自然に採取された「ワイルド・コピ・ルアク」の方が倫理的に好ましいとされている